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朝ドラ「寅に翼」雑感 その2

カテゴリー:日々清々 更新日時 2024/09/25

今回も朝ドラ「寅に翼」について。

 「寅に翼」は日本で最初の女性弁護士で裁判官にもなった寅子さんの物語で、そろそろ終盤である。         

 このドラマは見れば見るほど、良くできている。昔の話のようでいて現代の私たちの抱える課題を重くなりすぎないような味付けと共に提案してくれている。     

 

最近のテーマでいえばLGBTQと夫婦別姓。

 

LGBTQについて言えば、専門家の監修を受けているとのコメントも載せてしっかり放送している。(知らない方のためにお伝えすると)寅子の大学時代の友人轟君がゲイで、あるときそれを寅子にカミングアウトするのであるが、寅子は当初は受け入れられない。人権意識の高い寅子はそのことを謝りに来たときの轟君の台詞「俺たちの関係は俺たちが死ねばこの夜から消えてなかったことになる。でも、出会えて俺は幸せで、じいさんになったときに幸せだったと言える人生を生きたい」

 今の社会ではまだまだ不自由を強いられているLGBTQの方たちの気持ちを代弁しているのだろうと思う。

 同様に夫婦別姓もどうして女性が男性の姓を名乗ることが当たり前のこととされているのか、再婚に際しての寅子の悩みという形でしっかり提言されている。

 

 我が家について言えば父は母の姓を名乗った。父のプライドもあったろうが、幼い私に父が「憲法でどちらの姓を名乗っても良いということで我妻の姓を名乗ったに過ぎない。婿養子に入ったわけではない」とわざわざ説明してくれたことを覚えている。当時でいえば先駆的で先進的な決断だったろう。

 私自身は独身時代の学会における業績や知名度を考えて我妻の姓を名乗りたかったが池田姓となった。学会ではしばらく旧姓を通していたがめんどくさくなって、池田に変えた。業績が消えてしまったような残念な気持ちになったし、実際新しい先生たちにとっては今の私と昔の私は別人だっただろう。夫婦別姓は日弁連や経団連などが推進の姿勢を打ち出しているが自民党の根強い反対で未だ実現していない。これだけ女性の社会進出があるのに、結婚で姓が変わる不合理を男性も女性も強いられていることがなぜわからないのだろう。

 同様に先住民族や障がい者の方たち等への対応でも不合理、不平等なことが今の世の中にもたくさんあるだろう。知らず知らずのうちに自分のその価値観で他者を論じそうになることもあるということを認識しながら、他者への共感性を豊かに持ち人権意識を忘れずにいたいと思う。そして、その感性こそが医療や介護においては必要なのだと思っている。

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