カテゴリー:日々清々 更新日時 2024/05/27
気がつけば「古希」だった。幸いにも目尻にしわは無く、マスクがほうれい線を隠してくれるのでぱっと見には古希には見えないだろうと鏡を自分で確かめて肯く。還暦を迎えたときには、古希のこの年まで仕事を続けるとは想定していなかった。
老健を廃止するときにクリニックを閉じることを考えなかったと言えば嘘になる。けれども、日々の診療で関わり続け、長いお付き合いをしてきた方たちのことを思うと簡単にやめる判断はできなかった。
足寄で「医者」をする決意をしてから38年、大波小波をかぶりながらやめずに医者を続けている理由が確かにあった。それは、地域で共に生きる医者として地域で共に支え合う医療機関として困難はあったけれども、この時間が「幸せな時間」だったからに尽きる。
古希を迎え一人医師体制になった最近、患者さんたちから心配され労られている私がいる。
「先生、体に気をつけて」「無理しないで下さい」「大変でしょうけどがんばって」
一方向性ではなく相互関係としての患者・医療者関係が成立できていることがとてもステキなことだと思う。私にとっても彼等は「ただの患者」ではなくてあんなことやこんなことを乗り越えてきたAさんであったり、若い頃やんちゃでむちゃくちゃな血糖だったBさんでいまはすっかり優等生だったりする歴史。それは同時に生意気で気が強い姉ちゃん医師が地域において必要とされる仲間として受け入れられるようになった歴史でもある。
患者さんや地域の近くにいていつでも診てもらえて安心できる環境で(近接性)その人丸ごと診ていく(包括的)さらには多職種で専門医との連携を密にしながら、家族を含めて(協調性)実践され、継続的でかつ責任ある医療実践というプライマリケアの考え方の延長線上に双方向性の患者・医療者関係があるし、そのことによって誰よりも支えられ育てられているのも医療であり医師であるのだと実感している。
とはいえ、若いふりをしていても、やっぱり古希は古希。疲れたらちゃんと休み、サボれるときはサボらせてもらいながら、これからも患者さんやスタッフといたわり合って、支え合って元気に歳を重ねていきたいと思っている池田でした。
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