ドクターブログ たくさんの小さな光に囲まれて

心が流れる七夕

カテゴリー:地域で医療する楽しさ 更新日時 2009/08/07

 昨日、私達の病院の七夕の催しが行われました。
保育園の子ども達30名余りに来てもらって、入院中のお年寄りのために歌とお遊戯をしてもらったのです。
 数日前からスタッフ達による、七夕の飾り付けがはじまり、色とりどりの風船や短冊や飾りがデイルームを彩っていました。
 病院という、ともすれば無機質になりがちな空間に、季節の風や生活のにおいが入ってくればいいなあ、と想って始めた七夕の催しも20年以上になります。
 お手伝い下さるのが、婦人合唱団の合唱の年もあれば、子ども達の踊りの年もありました。

 
幼い歌声が病棟に流れると、穏やかで豊かな気持ちがその場を浸していきます。子どもたちの力はスゴイ。
 認知症やほとんど寝たきりの方々が車いすやベッドごとデイルームに集まっています。
 孫を思い出して涙ぐむ人、片麻痺で半分しかできない手で手拍子を打ってくれる人、いつもにはない笑顔やイキイキとした様子を見ながら、私自身も豊かな気持ちになっていました。
 「笹の葉さーらさら。軒端に揺れる・・・・」懐かしい童謡
 「ウサギ追いしかの山~」歌が変わって、定番の「ふる里」が流れると・・・
 なんと、若年に発症して、すでにかなり重度の認知症の方が、口ずさんでいるではありませんか。いつもぼんやりと笑っているだけのその方が、泣き出さんばかりの顔をして、ふる里を歌っています。
 まだ50歳代ですでに重度の認知症になり、年をとったお母さんが献身的に在宅で介護されているその方の心に、今、何が去来しているのだろう。
  そう想うと胸が熱くなりました。明らかに彼はその歌に心揺さぶられていました。彼の心に残っていた感情が揺れています。きっと、子どもの頃から慣れ親しん だ日本人の心の歌ともいうべき「ふる里」は、彼の心の底の引き出しにしまわれていて、子ども達の歌を聴くことで、その引き出しが開いたのでしょう。小さな 奇跡を見たような気がしました。

 「志を果たして、いつの日にか帰らん~」
 3番の歌詞を、人としての命を終え、人として生まれた使命を果たしてあの世というふる里に帰る~と読み解いた文章を読んだことがあります。
 今この場所で、子ども達の歌を聴いているお年寄り達。
 戦争を生き抜き、家族を作り、時代時代の波に揉まれながら、その人なりの使命を果たして、この我妻病院に集ってきました。
 彼らが志を果たして、この世の命が終わるまで、私達の「end of life care」が続きます。彼らのの残りの日々が少しでも豊であることを願って。

山崎章郎先生の講演 医療は「契約」?「信頼」?

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